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地獄

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地の底で、いつ終えるとも知れない責め苦を受け続ける… 「地獄」

 「地獄」 とは、本来の意味では仏教やキリスト教、イスラム教など数多くの宗教で語られる、死後 に堕とされるとされる苦しみに満ちた牢獄のような世界や場所のことです。 奈落とも呼びます。 一般的には現世において や仏の教えに背く悪行を行った結果、神仏の怒りや審判による裁きによって堕とされ、千年万年単位、あるいは限りなく無限に近い間 (数兆年とか京年とか垓年とか) そこに閉じ込められて責め苦を受け続けることとなります。

 キリスト教やイスラム教の場合は有期刑ではなく無期無限刑 (永遠) ですが、仏教では長い長い年月を経て地獄を脱し成仏することができます。 宗派によってはその後輪廻転生し、再び現世に生まれて修行を行う (輪廻から解脱して天国に行けるまでやり直す) ことになります。

 地獄というように、地の底、奈落の果てにある監獄であり、神が住まう天とは対比の関係となっています。 仏教では最上位となる天道から人間道、阿修羅道、畜生道、餓鬼道とこの地獄道が六道とされ、地獄は最下層の世界とされています。 またその地獄も罪の重さに応じて八熱地獄 (等活・黒縄・衆合・叫喚・大叫喚・焦熱・大焦熱・阿鼻地獄) や八寒地獄 (八熱地獄の寒い版) といった堕ちるべき階層がつけられ、それぞれに長期間の刑期が設けられています。 イスラム教の地獄も七つの階層が設けられていますが、仏教と違い一度堕とされると永遠に抜け出すことはできません。

 ちなみに仏教地獄の最深部である阿鼻地獄は無間地獄とも呼ばれ、私たちのいる人間道 (現世) から20,000由旬の深さとされます。 1由旬 (ヨージャナ) は約11.3km〜14.5km 程度 (あるいは仏教においては7〜8km) とされますから、少な目に見積もっても 14万km の地の底ということになります (ちなみに地球の半径は 6,378.1km なので突き抜けてしまうやないかいという話もありますが、宗教の死生観における天国や地獄は空の果ての宇宙や地球の底という場所を直接指すわけではないので無意味な ツッコミ です)。 堕ち続けて阿鼻地獄に到達するだけで 2,000年かかると云われ、その責め苦は他の地獄が極楽に感じられるほどの厳しさだとされます。

 地獄では (獄卒) が落ちてきた人間 (亡者) に趣向? を凝らしたバラエティに富む様々な責め苦を与えます。 その様子は地獄絵図として描かれ、過去にあっては信徒や 信者、庶民の悪行に対する戒めや信仰・善行に対する反面教材としての教えを、現代にあっても子供たちを恐怖のどん底に突き落とす役割を担っています。

 現代人、とくに日本人で特定の宗教に帰依したり心から信じている人は少ないのでしょうが、子供の頃に刷り込まれた恐怖を伴う地獄のイメージは深層心理に理屈を超えた影響を及ぼしていることも多いでしょう。 生きている人で死後の世界を見た人はいないので、もしかしたら死んだ後に人知を超えた何らかの別世界が存在するのかも知れませんが、できれば地獄には堕ちたくないものです。

 ちなみに 筆者 の小学生の頃の担任の先生が授業の合間に訳の分からない 雑談 をやたらとする人で、地獄の恐ろしさをこんこんと説かれたことがあります。 今にして思えばキリスト教徒だったのか、自殺 (自死) は必ず地獄行と何度も繰り返され、別に宗教とか地獄とかまるで信じてはいないものの、人生で何度か精神的に追い詰められた時に、その刷り込みが作用したのか踏みとどまることができました。

仏教とキリスト教の天国・地獄観

 地獄に堕とされる罪は、仏教の場合は 殺生・窃盗・邪淫・飲酒・嘘・邪見 (異教)・尼僧・童女への性加害、親や僧侶の殺害などで、後に行くほど罪が重くなり、生前に一度でもその罪を犯すとその後どれだけ改心しても善行を積んでも赦されることはなく原則地獄行です。 因果応報という奴ですね。

 一方のキリスト教は、どれほどの極悪人でも死の間際に罪を告解して赦しと神の恵みを求め、聖職者による終油の秘蹟を受けることで悔い改められたとして罪が赦されます。 キリスト教における絶対的な禁忌は自殺 (自死) ですが、これは教義に反するだけでなく、この罪の告解や終油の秘蹟が受けられないからでもあります。 イスラム教では死後の審判で犯した罪と善行の多寡が秤で計られ、罪がより大きければその後の天国につながる橋の渡りで転落し地獄行です。 ただし最高の善行に聖戦 (ジハード) があり、どんな悪事を働いていても聖戦に身を投じて殉死すれば天国行きが約束されます。 仏教にも南無阿弥陀仏を唱えることで極楽浄土に行けますという宗派がありますが、このあたりは輪廻転生という考え方の有無を含め、宗教観や死生観の大きな違いとなっていますね。

 日本のように仏教的な価値観が根付いた国では、どんな善人でも改心していても犯した罪は罪としてちゃんと償え身を清めろという考え方が支配的ですし、輪廻転生を含め、死生観や日々の生活のあれこれ以外に、マンガアニメゲーム といった創作物にも影響を与えています。 宗教の教えにどちらが良い悪いはありませんが、日本人の筆者などは、キリスト教的に生前どんな悪さをしても赦しを請えば赦されて永遠に天国行きよりは、罪は罪としてちゃんと償ってまたやり直しなさいの仏教的な方がしっくり来るような気がします。 まぁ仏教の罪を厳密に適応すると誰もが地獄行を免れませんが…。 警察沙汰になるような犯罪はしていなくても、害虫を駆除したり冷蔵庫のものを盗み食いしたり肉を食べたり酒を飲んだり嘘をついたら原則地獄ですから。

 それはそれとして、地獄絵図を描いた仏画・宗教画家や 絵師 らは、根本に敬虔な信仰心はあるにせよ、描くのは結構楽しかったんじゃないかなという気は 絵描き のはしくれとして思います。 美しい世界を描くのも楽しいですが、醜い世界、おどろおどろしい世界を描くのは想像力が刺激されて楽しかったりもしますし。 現在の芸術や娯楽としての イラスト、あるいは 物語 などは宗教のそれと文化的な連続性がありますし、直接的に地獄や天国を描いていなくても、罪や赦し、魂の救済に対する考え方が異なる文化のそれでは違っていたりします。 日本のアニメなどが世界でどう受容されているのかなどは、考えると文化の違いが浮き彫りになって楽しく、また興味深いものです。

現実の世界を地獄に喩えることも

 これが転じて、現実の世界でも苦しみに満ちた状態や非道無道がまかり通る阿鼻叫喚の状態を喩えて地獄と呼ぶことがあります。 単に地獄とか地獄のような光景といった言い回しの他、その状態を指す言葉に地獄を接頭・接尾したり、英語のヘル (hell) が使われることもあります。 貧困地獄とかヘルジャパンみたいな云い方ですね。 また仏教絵画のそれに倣い、地獄のような光景を地獄絵図と呼ぶこともあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年10月10日)
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