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原価厨

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たまたま知った原価が嬉しくて、吹聴したりマウント取ったり 「原価厨」

 「原価厨」 とは、何かの商品、とくに飲食店で提供される飲料や料理などに対し、生半可な知識による原価率を元にして 「高い」「ぼったくりだ」「自分で作ればもっと安くできる」 などと得意げに主張する人のことです。 厨は 厨房 のことで、相手を幼稚な中学生やおこちゃま (キッズ) のような人間だと揶揄する意図があります。 一般的にはたまたま知ったものの原価の安さに驚き、自らの狭い視野や知識を元に勘違いの他者批判をする困った人みたいな扱いが多いでしょう。

 例えば喫茶店のメニュー。 飲み物のソーダ水などは、原価は微々たるものです。 仮に1杯350円で提供されているとして、原価はせいぜい数円程度でしょう。 材料をどこから仕入れるか、業務用の炭酸ボンベやソーダ水の元の種類や時代にもよりますが、10円を超えることはないのではないかと思います。 これだけを見ると、10円もしないものを350円で売るなどぼったくりだ、と云えなくもありません。 また仮にソーダ水の原価が1杯8円で同じ値段のアイスコーヒーの原価が50円なら、アイスコーヒーを頼む自分が経済的に賢いように振る舞ったりします。

 しかし喫茶店で提供する以上はソーダ水を作る厨房のスタッフもいますし、ホール でテーブルに届けるスタッフだっているでしょう。 当然彼らに支払う給与などの人件費が必要になります。 また店舗物件を借りたり購入する費用、食器類や調理器具、冷蔵庫やテーブルや椅子、レジスターなどの什器備品も必要ですし、水道代や電気代、ガス代などの光熱費だってかかります。 チラシ を作って配ったり、利益がでたら税金だって払わなければなりません。

 また客側は注文したソーダ水を単に飲むだけでなく、落ち着いた 雰囲気 の店内でゆっくり椅子に座り、ひと時の憩いを得ることができます。 それら入場料や場所代も含めた価格だとの価値が感じられなければ、公園のベンチで水筒に入った自作ソーダや水を飲めばいいわけです。 また僅かな原価の差を惜しんで、その時に自分が飲みたいメニューの注文をやめるなどは、さほど合理性も感じられません。

 こんなことはここで改めて説明するまでもなく、社会経験があるまともな大人は百も承知ですし、子供でも親が商売をしていたり少しでも想像力があればこんな見当違いの意見はしないでしょう。 しかしそうしたことに考えが及ばない人、子供時代の無敵感が続いていて 生意気 盛りの子供などは、原価に比して何十倍もするような値段で飲み物を注文する人が酷く愚かに見えてしまうものなのでしょう (本気でそう思っているのか、ネタ釣り としてそれを装っているのかはともかく)。

 これは何も原価に限らず、それ以外の様々な事柄にも言えることです。 たいしてその分野の知識など持っていない 素人 なのに、「簡単そうだ」「どうしてそんな無駄な事をしているんだ」「もっといい方法があるのに」 などと自信満々に見当違いの自説を当事者や専門家に説く人は大勢います。 医者に訳の分からない民間療法や 陰謀論 めいた現代医療批判を上から目線で得々とするような人たちですね。

 素人や部外者が思いつくようなことは、専門家や当事者がとっくの昔に考えていてダメだと結論を出したものばかりです。 もちろんごく稀に、部外者の意外な視点や素朴な閃きが役に立つこともありますが、そんなことは滅多にありません。 自分がよく知らない世界のことに意見、それも批判をする時は、よほど慎重にしなければ赤っ恥をかいて終わりです。 専門外の分野の知識を得るのは容易なことではありませんが、自分の無知を疑う謙虚さと専門家や当事者に対する リスペクト さえ忘れなければ、少なくとも恥ずかしい思いだけはしなくて済むかもしれません。

 なお急いで付け加えると、僅かな原価を気にしてこだわる人全てが悪いわけではありません。 世の中には倹約が 趣味 だという人も大勢いるし、たった数円の価格差のために遠回りして買い物をしたり僅かなポイントを必死で貯めて精神的な満足感を覚える人だってたくさんいます。 趣味などというものは興味のない人にとっては無駄なことばかりで、元来そうしたものです。 個人が好きでやるだけでなく、それを興味のない他人への当てつけや批判に使ったり、場合によっては強制するような原価厨の言動が嫌われているだけです。

そもそも原価って何じゃ?

 原価とは、ある商品やサービスを生産・販売するために消費する経費のことです。 仕入れ値、元値を指すこともあります。 原価が売値に対してどのくらいの比率になるのかを示すのは原価率と呼びます。

 ただし飲食店で提供する料理などの場合、食材の質が料理の質に大きな影響を与えがちで、かつ質の良い食材は仕入れ値も高いことから、しばしば食材費用のみをメニューの原価とした原価率で語られることがあります。 例えば 「一般の料理は原価率30%程度だが、この店では食材にこだわって50%を超えている」(だから美味しい) みたいな触れ方ですね。 一般の原価や原価率は、原材料費以外の経費も含めて扱われます。

 ちなみに駅前などの好立地、まして都市部や東京・大阪といった大都市の繁華街となれば地代が高くてそれらの費用も必要経費として提供する料理などに跳ね返ります。 逆に土地が安い場所、あるいは店舗物件が自己所有ならその分の費用が相対的に安くなります。 俗に自己所有物件で営業するお店の、優れた食材を使った原価率の高い美味しい料理を 「家賃がない味」、個人でやっている独立系のお店をフランチャイズやチェーン店などと比較して 「ロイヤリティ代がない味」 などと呼ぶこともあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年7月26日)
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