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「悪霊退散!」 神秘的・禁欲的で聖なる魅力を発揮する 「巫女」

 「巫女」(神子/ みこ/ ふじょ) とは、主に日本の神道における に仕える未婚女性の祭司のことです。 御神子 (みかんこ) や巫 (かんなぎ)、舞姫と呼ぶこともあります。 主な役割は神に捧げる神楽を舞ったり、占いや祈祷、神託や口寄せ (降霊) などですが、現代にあっては神主などの神職の補助役として神宮・神社における各種業務を担い、とくに参拝者や行事参列者の案内から売店での対応、事務作業までをこなす存在となっています。

 日本人の多くがお正月の初詣などで目にする巫女さんの場合は、臨時のアルバイト (助勤・助務と呼ばれます) として採用された近隣の女子高生や女子大生といった若い女性のケースが多くなっています。 おおむね巫女装束と呼ばれる紅白の和装を身にまとい 黒髪 を後ろで一つ結びした姿で、地域にもよるのでしょうが、冬休みにおける人気のアルバイト先だと 認知 されているようです。 また地域で小さな子供の中からほんの数人を選び、お祭り の際に巫として扱う場合もあります (女児男児1人ずつのペアで選ばれたりもする)。

 マンガアニメゲーム などの創作物においては、神や霊、妖怪、 といった 人外 が登場するオカルト・ファンタジー作品 で、しばしば神秘的で超常的な霊能力を持つ存在として描かれます。 日本の場合、卑弥呼にイメージされるような漠然とした古代呪術や神道に加え仏教の影響も大きく、またそれぞれは土着の文化や風習、儒教や道教をはじめインドや中国を始めとするアジア地域の宗教や思想とも関連し、あるいはごちゃ混ぜとなり、独特な 「それっぽさ」 が形成されています。

 容姿的には色白でほっそりした、いかにも和美人・大和撫子といった品のある風情が選ばれます。 髪型黒髪ロングお姫様カット だったり、結び目がやや下になる ポニーテール (ひとつ結び)、でこ出し のケースもあります。 火や炎、邪と戦う少女といったイメージから強い女、戦う乙女のキリリとした感じが多いかもしれません。

「セラムン」 の火野レイはかっこよくてかわいかった…

 巫女を代表するような キャラクター は昔からたくさんいますが、ひときわ存在感のあるものに、「うる星やつら」(1978年) に登場する友引高校の養護教諭でもあるサクラ、「美少女戦士セーラームーン」(1992年) のセーラーマーズこと火野レイがいます。 このあたりは、現在の巫女さん造形に大きな影響を与えた重要な存在でしょう。

 とくに火野レイは、東京の麻布十番に実在する氷川神社をモデルとした火川神社の巫女であり、セラムン大ブームの中、同神社への 聖地巡礼 なども行われ、ちょっとした巫女さんブームも起こしていました。 また 「東方Project」(1996年) で 主役 を演じることが多い博麗神社の巫女、霊夢は、ある意味でもっとも有名な日本の巫女と呼べるかもしれません。

 「犬夜叉」(1996年) の桔梗や日暮かごめ、時代を下って 「らき☆すた」(2004年) の柊姉妹、「ラブライブ!」(2010年) の東條希、「呪術廻戦」(2018年) の庵歌姫あたりは、すでに好ましい架空の巫女さんイメージや人気がある程度固まった後に、さらなる豊かなバリエーションを作った存在でしょう。 いずれも本人が巫女なだけでなく、同じ作品内の他の友人キャラらもお手伝いといった形でしばしば巫女装束を身に着け、巫女服の魅力をアピールする存在でもありました。 なかでも 「らき☆すた」 は、柊姉妹が住み作品の舞台ともなった鷹宮神社に初詣客・参拝者が激増し、いわゆる 萌えおこし 成功のモデルケースにもなっています。

 また2003年5月に PSYCHO から発売された 18禁 恋愛アドベンチャーゲーム 「巫女みこナース」 は、主題歌 「巫女みこナース・愛のテーマ」 が独特なテンションによる ノリ の良さからある種の 電波ソング のような扱いもされつつ爆発的ヒットとなっています。 そのキャッチーな魅力からその後もたびたびリバイバルヒットもしており、ネット を通じて おたく のみならず 一般人萌え の対象としての巫女さんの存在を強く喚起したものでもありました。

 同じくネットで2007年から2008年にかけて大流行した 「新豪血寺一族」 関連の楽曲 PV「新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師」 に登場する ピンク髪 の巫女、琴姫もいます。 こちらは巫女人気というよりは陰陽師である矢部野彦麿の人気といった方が正確ではありますが、ニコニコ動画を中心に PV があまりの大ヒットとなったため 二次創作 などもたくさん作られ、巫女や巫女的な存在の人気にブーストをかけることとなっています。 こちらも折々でリバイバルヒットを続けています。

和風なあれこれを詰め込めるフォーマットして機能する巫女

 神道や日本神話に由来する故事や言葉、道具類が併せて用いられることが多いでしょう。 アイテム としてお祓い棒 (祓串 (はらえぐし)・御幣 (ごへい) や神楽鈴 (かぐらすず)、あるいは八咫鏡、草薙剣、八尺瓊勾玉の三種の神器などは、巫女によく用いられるモチーフです。 食べ物ではお米が特別な意味を持っているので、米や米を原料とする酒や餅が、楽器では雅楽に用いられるものを中心に笙 (笛) や横笛 (竜笛)、太鼓、琴、琵琶、胡弓といった弦楽器なども象徴的に扱われます。 動物では狐や蛇、カラス (八咫烏)、鶴と亀、うさぎ、犬や狸、化け猫のイメージから猫も選ばれたりします。

 しかし本来はさほど関係のないもの、例えば 「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」 の九字の呪文と九種類の印を結んだ九字切りやお札で悪霊退散をするなどは、一般的には道教や仏教のものと考えられますが、普通 に巫女の振る舞いとして 認知 されているといってよいでしょう。 また密教の護摩焚きの影響からか火や炎のイメージが付与されたり、法具である独鈷 (どっこ) が使われたり、朝廷に仕える女官や武家の姫のイメージが付けられて華美な冠や扇子、あるいは薙刀・和弓といった武器を持ったり、キリスト教的な言葉や 概念 が用いられることもあります。

 このあたりは奈良時代から江戸時代までの神仏習合はもちろん、日本人の宗教に対する独特な自由さ、というより野放図でフリーダムな捉え方や考え方も影響しているのでしょう。 作者 の無知や勘違いによるものもありますが、和風のあれこれを詰め込めるフォーマットとして意図的に機能させている部分もあります。 アレンジや工夫が進む中で、邪に染まり、厄払いや加持祈祷ではなく妖怪の召喚や 呪い をもっぱらとする堕巫女や黒巫女といった概念も登場しています。 しかしいかにも仏教な剃髪とか木魚とかお線香といったものは避けられ、世俗的な印象によって要素の切り貼りがされてはいます。

 霊能力とか超能力などが存在しない 日常 を扱う作品においても巫女といった 設定 を持つキャラがしばしば登場します。 家が神職だったり、お正月といった季節のエピソードでアルバイトとして関わったりです。 神社は日本中どこにでもありますし、初詣や節分、夏祭りや七五三、あるいは結婚式を始めとする様々な行事や イベント を通じて親しまれる身近な、それでもどことなく特別感のある魅力的な存在だからでしょう。 他の人気の和装である晴れ着や浴衣なども、シチュエーション として神社とは無縁ではありません。 和装束や和服が日常でほぼ見られなくなった中、無理なく和のテイストを持つあれこれを描けるため、お正月などの 季節絵定番 ともなっています。

 ただし 昭和 の途中くらいまでは、現在ほどの人気はまったく持っておらず、創作物に登場するケースもそう多くはない 地味 な存在でした。 それは身近な実在宗教に対するいくばくかの遠慮があったのかもしれませんし、子供や若者にとって和風はどこか ダサ く洋風がかっこいいと思われがちで 需要 が薄かった部分もあったのでしょう。 エロジャンル でも、どちらかと云えば尼さんやシスターなどの人気が高かった印象があります。 いずれにせよ禁欲的で神秘的な存在を汚すという背徳感にグッとくる ヘキ の持ち主にとって、神や仏に仕える存在はすこぶる魅力的に感じられるものなのでしょう。 現在では重要な 萌え要素 のひとつとなっています。

巫女装束やその影響を受けた巫女服は大人気

 巫女さんを象徴する巫女装束は、紅白となる白衣と緋袴を中心に腰の前部分に リボン (蝶結び) のような結び目がある帯とインナーに襦袢、足元は足袋に草履などが活かされる形でアレンジや改変がされたものがよく描かれます。 実在する本来の巫女装束とは異なる部分があるもの、コスプレ のための衣装などは、とくに巫女服とか巫女風衣装などと呼ばれます。

 そもそも巫女装束自体、様々な種類があるので (神社ごとにしきたりが異なることもある)、厳密に描くのはそれなりの知識が必要となります。 とはいえ袴姿の紅白和服に前リボンさえあればそれっぽく見えること、ロングドレスや メイド服 といった ワンピース でボトムスが スカート の形状をした洋服とアレンジしやすいこと、ミステリアスで神秘的なイメージを喚起しやすいことなどから、学校の 制服 や職業としての衣服の中でもとくに高い人気を得る存在となっています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2006年11月12日)
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